歯科の学びを知ろう 4[臨床実習]

5年生からはじまる「臨床実習」。
病院で実際に患者さんを診察!

歯科の学び|2021.07.02

歯学部に入学しての6年間で学ぶことは、学校案内やシラバスに書かれていても、実際にどんな授業があって、どのくらい大事なものなのかイメージしづらいですよね。そこで「実際にどんなことを勉強するの?」という率直な疑問を、それぞれの科目を担当している大学の先生に聞いてみました。今回は、5年生からスタートする「臨床実習」。いよいよ歯科医療の現場に立って、実際に患者さんを診察します!

コミュニケーションの基本を大切に、 失敗を恐れずチャレンジして。

――5年生になると臨床実習がスタートします。

三瓶先生(以下S):5年生の4月から本格的な臨床実習がはじまりますね。臨床実習の目的は、指導歯科医師の指導のもとで学生が診療行為を実際に行って、歯科医師として最低限必要な知識、診断、技能、態度を習得することです。本学の場合は附属病院で行っています。主な実習内容としては、医療面接、診察、検査、診断、治療計画の立案、治療行為、患者指導、歯科技工などですね。

――病院には診療科目がいろいろあると思いますが、それぞれの科で実習ができるのでしょうか?

S:補綴科、保存科、歯周治療科、口腔外科、小児歯科、矯正歯科、歯科麻酔科、歯科放射線科など、さまざまな科をローテーション形式で実習します。すべての科を体験する中で、尊敬できる指導歯科医師と出会うこともありますし、専門分野への大学院進学を考えるきっかけとなることもありますよ。

――患者さんを診察するとなると、やっぱり最初はドキドキ……緊張しますよね?

S:そうですね。慣れない歯科医療現場で初対面の患者さんと接することになりますから、不安や緊張で表情が硬くなったり、声が震えることもあります。最初は患者さんとのやり取りも教科書通りでぎくしゃくしています。

――そういうとき、先生はどんな言葉をかけてあげますか?

S:上手くできなかった場合でも、診療終了後には「ありがとう」「お疲れさま」といった声かけをして、良かった点は褒めてモチベーションを上げるように努めています。ただ、患者さんにとって不利益となるような間違った説明や危険行為がみられたときは、改善すべき点をしっかりと伝えるようにしています。

――臨床実習を楽しみにしている学生さんもいると思います。

S:実際の患者さんに歯科医療行為を実施できるという点は、臨床実習ならではの楽しみのひとつだと思います。中には、ひとりの患者さんについて、初診から治療完了までの一連の診療を体験できるということに強い興味を持つ学生もいますね。

――三瓶先生の「小児歯科」では、臨床実習にやってきた学生さんは、具体的にどんなことを経験しますか?

S:こどものお口の中には、むし歯や歯肉炎、歯並びの悪さ、歯のケガなどの問題が生じることがあります。小児歯科では、こどものお口の中に起こる色々な問題に対する診察や治療法を学んでいきます。それからもちろん、むし歯予防も重要な診療内容です。こどもに対して歯磨きの指導、機械による歯のクリーニング、フッ素塗布、食事指導などを実施します。

――実習をはじめた頃と、ひととおり経験した後で、学生さんの気持ちや技術、態度などに変化を感じますか?

S:学生生活の中で、親族以外のこどもと接する機会ってほとんどないでしょう。実習をはじめた頃は、みんな付き添いの保護者との会話は弾んでも、こどもとの会話には苦労していますよ。でも終盤ともなると、こどもへの接し方にも慣れ、アニメやゲーム、スポーツなどの話題で盛り上がっている光景もみられるようになります。コミュニケーションが良好になると、技術面でも余裕が出てきます。

――これから臨床実習に取り組む学生さんには、どんな心構えでいてほしいと思いますか?

S:失敗を恐れずにどんどんチャレンジしてほしいと思います。私も過去に数え切れないくらい失敗をしてきました。でも失敗を繰り返す中で、ひとつずつ克服して成長につなげてきました。特に技術面は、トライ・アンド・エラーの数だけ向上していくと感じています。あと、臨床実習は患者さんや指導歯科医師、歯科衛生士など、さまざまな人とのコミュニケーションが求められます。その中で、コミュニケーションの基本である挨拶はきちんとできるようになってほしいですね。

――人と人のつながりを大事にして、技術の面では勇気を持って積極的に取り組むことが大事なんですね。何ごとも経験ですもんね。本日はありがとうございました!

教えてくれた先生

日本歯科大学新潟生命歯学部

三瓶 伸也 先生