ARTICLE NUM:023

歯科衛生士/前谷 奈那さん

ひとりひとりと信頼関係を築いて、
患者さんの力になれる仕事です。

DR+DH+DT WORK STYLE|2024.10.21

——前谷さんは歯科衛生士として働きはじめて何年目ですか?

前谷さん(以下M):10年目になります。新卒でこちらへ入りました。

——普段はどんなお仕事をされているのでしょう?

M:今はブラッシングのやり方や簡単な食事指導、あとは虫歯予防のためのメンテナンス、歯周病治療をメインとしています。他にも「MRC」っていうものに携わっています。

——「MRC」という言葉ははじめて聞きました。どういうものなんでしょうか。

M:かんたんに言うと、子どもたちの予防矯正のことです。今、歯並びが悪くなる原因のほとんどは、遺伝的なものじゃなくて後天的なものだと言われています。矯正装置をつければ歯並びはよくなるんですけど、呼吸の仕方とか舌の使い方とか、そういった悪習癖が直らないと結局、後戻りしてしまうんです。患者さんに「MRC」と言っても伝わらないことが多いので、私たちも噛み砕きながらお伝えしています。早いうちからはじめたほうがいいこととか、もっと皆さんに知っていただけるといいなと思います。

——生活習慣やそれぞれの癖が歯並びを悪くしてしまっているんですね。

M:あとは、大きくなってから矯正治療をはじめようとすると歯を抜かなきゃいけなくなって、装置をつけて痛い思いをするっていう子もいます。なので、そうなる前によくない癖を取り除いてあげて、歯並びが悪くなるのを予防しよう、というのがMRCです。

 

——「MRC」のための専用の部屋があるそうですね。

M:「MRCルーム」っていう、トレーニングルームみたいなスペースがあって、そこで子どもたちに歩くトレーニングなどをしてもらいます。

——え、歩き方も歯並びに影響するんですか?

M:口呼吸を直すために、歩いているときに呼吸を止めるトレーニングをします。口呼吸をしていると、二酸化炭素を吐き出しすぎてしまうので、そうならないように身体の中に二酸化炭素を溜める練習をするんです。

「今は、歯周病の『認定歯科衛生士になるための勉強をしています」

——ところで歯周病治療にも力を入れているそうですが、前谷さんはご自身で希望して関わっているんでしょうか。

M:うちの医院ではどのスタッフも歯周病治療に関わることになっているんですけど、私はもっと力を入れていきたいなと思っていて。今も歯周病の「認定歯科衛生士」になるための勉強をしています。

——保険適用の歯周病の治療の他に、自費の治療もあると聞きましたが、保険内の治療とは具体的にどう違うんですか?

M:保険内の治療だと、歯石を取ったり、歯磨き指導をしたりして歯周病を改善させていくことがメインになります。でも歯周病の原因になっている歯周病菌って、それだけではなくならないんですよね。もともと歯周病って再発しやすい病気で、重度化していくにつれてコントロールがしにくくなるんです。それが自費の歯周病治療では、抗菌薬みたいなものを使って、菌を弱らせながら治療をすることができるんです。

——なるほど。ちなみに歯周病を予防するために、まず自分でできることって何でしょうか?

M:その人のお口の中に合った方法で歯磨きをすることですね。自分では頑張っているんだけど、何が正しいのか分からなくて結局は歯周病になっちゃったっていう患者さんが多いので、まずは来院していただいて、お伝えした方法を実践していただくのがいいと思います。

「新人の頃は、患者さんとお話をすることだけでも緊張していましたね」

——ここからは前谷さんが歯科衛生士になるまでのことを教えてください。歯科衛生士というお仕事を選んだのはどうしてですか?

M:私、小学生から中学生まで矯正治療をしていたんです。それで「何か医療系の職に就きたいな」と思うようになったのがきっかけでした。最初は歯科衛生士がどういう仕事かピンときていなかったんですけど、調べたときに、歯医者さんの隣にいるあの人たちが歯科衛生士なんだっていうこととか、国家資格であることとか、新潟にも短大があって勉強できることを知りました。

——短大に入ってみて、学生時代はどうでしたか?

M:同じ道を目指す仲間と声を掛け合って、楽しく勉強することができました。女の子が多い環境だったので、季節ごとのイベントですごく盛り上がった記憶があります。大学病院が併設されていたので、リアルな医療を身近に感じながら過ごすことができましたし、歯学部もあったので、歯科医師を目指す学生との交流もあって。仲間と一緒に勉強を頑張ることができるいい環境だったなと思います。その頃の友人とは今も頻繁に会っていますね。

——就職してすぐの新人の頃のことは覚えていますか?

M:もともとすごく緊張するタイプなのもあって、なかなか突き進んでいけなかった記憶があります。でも先輩たちがいろいろ教えてくれる環境だったので、ちょっとずついろんなことができるようになっていきました。最初は患者さんとお話をするのだけでも緊張していましたね。

——今では緊張することもなく?

M:そうですね。今はお付き合いが長い患者さんも多くって。お口のことがメインですけど、日常生活のこともお話できるようになって、信頼関係ができているなって感じます。

——新人さんを見ていて「あの頃の自分みたいだな」って思うことはありますか?

M:ありますね。最初なので、失敗しちゃうこととか落ち込んじゃうこととか、どうしてもあると思うんです。私もそうだったし、「こういうときはこうするといいよ」とか「そんなに落ち込まなくても次できればいいよ」っていうことを伝えています。

——前谷さんは後輩にも優しそうですね。

M:どうでしょう(笑)。口調が厳しくなることはないんですけど、やっぱり患者さんに関わることなので、ちゃんとしなきゃいけないところはちゃんとしようねって言っています。

 

「患者さんひとりひとりと信頼関係を築いていける、いい仕事だなって」

——どういう人が歯科衛生士に向いていると思いますか?

M:患者さんやスタッフも含めてたくさんの人と関わる仕事なので、人と関わることが好きな人とか、細かい作業が好きな人にオススメしたいです。適性面でいうと、いろいろな人と関わりながら対応できる協調性、諦めない根気強さ、あとは働きながら学ぶことがたくさんあるので、向上心が求められるかなと思います。

——お仕事のやりがいをどんなときに感じますか?

M:患者さんに寄り添いながら、力になれることが、いちばんのやりがいです。患者さんに喜んでもらえると、やっぱり私たちも嬉しいし、本当によかったなって思います。患者さんひとりひとりと信頼関係を築きながら仕事ができるっていうところで、歯科衛生士はいいお仕事だなって感じますね。

——最後に、歯科衛生士を目指す高校生へ伝えたいことはありますか?

M:私は歯科衛生士をとても魅力がある仕事だと思っています。お口の健康を通してたくさんの人をサポートすることができますし、さまざまな働き方ができます。それに歯科にもいろいろな分野があるので、自分に合った分野を見つけることでお仕事がまた楽しくなるんじゃないかなと思います。歯科衛生士という資格を持っていること自体が自信にもつながるので、これから歯科衛生士を目指す人にも自信を持って今の勉強を頑張ってもらいたいです。

——自信を持って仕事ができるって、素晴らしいですね。今日はありがとうございました!

DR+DH+DT WORK STYLE

いいじま歯科クリニック

前谷 奈那(Nana MAETANI)

2015年日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科卒業 、いいじま歯科クリニック入社。 診療全般に従事。様々なセミナーや研修に参加し、自費メインテナンス、歯周内科治療、MRC(マイオブレイス矯正)などの自費治療にも携わる。ホワイトニングコーディネーター取得。現在、歯周病学会認定歯科衛生士を目指し奮闘中。

インタビュー収録:2024年8月