ARTICLE NUM:005

歯科衛生士/井上 麗奈さん

「歯科衛生士になろう」って、
なぜかずっと思っていました。

DR+DH+DT WORK STYLE|2021.06.25

——まずは井上さんのお仕事のスケジュールを教えてください。

井上さん(以下I):月曜は丸一日事務の日で、火曜から金曜が午前中事務、午後から診療になります。土日がお休みです。診療は、一般の歯科医院に通えない障がいのある方や高齢の患者さんを診ています。患者さんが動くと診察できないので、抑制具を使うこともありますし、歯みがきのトレーニングをしたりもしています。

——障がいのある方にきちんと歯みがきの習慣をつけてもらうのは大変なことのように感じます。ご家族と接することも多いのでしょうか。

I:でもメインはやはり患者さんになりますね。発語のない方とか、知的障がいでコミュニケーションが上手にとれない方も多いので、できるだけ早い段階で歯科に慣れてもらえるように、トレーニングから始めたりしてて。でもそのときに言葉では理解できなかったりもするので、絵カードやいろんなツールを工夫してコミュニケーションをとっています。

——こちらの施設ではむし歯や歯周病の治療も普通にされているのでしょうか。

I:やります。でも全身麻酔は行っていないので、そういう患者さんのときは大学病院に行っていただくことになります。

——診察以外にも事務のお仕事がありますよね。けっこう忙しいのでしょうか。

I:この施設は市が設置したところなんですけど、管理運営は歯科医師会がやっているんです。私たちは歯科医師会の職員として、高齢者施設や障がい者施設を対象にした口腔ケアの研修事業を企画したり、その際の歯科医師や歯科衛生士の手配をしたり、器具の準備をしたりしています。あと、研修後のアンケートの集計とか、内容を改善するための会議もしています。それから、ここで歯科医師や歯科衛生士のための見学会をやったり、急患診療の手配をしたり、材料の管理をしたり、薬局の薬剤の数を数えたり、とにかく縁の下の力持ち的な感じでいろいろと働いています。

——やることがたくさんあって常に動き回っている感じですね。

I:でも土日は休みだし、有給休暇も取りやすいですし、休日出勤みたいなのは一度もしたことがないですね。

——あ、それはいいですね(笑)。ちなみに井上さんが好きな業務は?

I:私は人と接するのが好きなので、午後の障がい者歯科に携わるのが好きです。

——毎日働いていると疲れもたまると思いますが、気分転換は必要ですか?

I:いや、別にいらないです(笑)。私は終わりの時間が早いから、他の医院で働く衛生士さんよりも疲れていないかもしれないですね。

——ちなみに、1日のスケジュールは?

I:朝起きて準備して、車で8時45分に出勤して午前中が事務の仕事です。12時からお昼休みで、午後1時から4時まで診療ですね。お昼は職場でみんなで食べます。私は母の作ってくれたお弁当です。定時が午後5時15分です。

「私は短大の実習生のときに体験してから、とにかく障がい者歯科をやりたくて」

——新卒で入られたんですよね? 一般の開業医さんではなくこちらを選んだ理由は、何かあるのでしょうか。

I:私はとにかく障がい者歯科をやりたくて。短大の実習生のときに体験して、いいなと思っていたんです。そしたらちょうどこの施設のスタッフが空いていて。障がい者歯科って、一般の歯科と違ってけっこう衝撃的なんですよ。暴れん坊もいますし。でもここで一生懸命やるとやり甲斐があるなと思ったんです。

——実際に働いてみて、やり甲斐は感じますか?

I:入室もできなかったような方が、ちゃんと部屋に入って横になって、診察ができるようになるときはすごく嬉しいですね。なかなかできない方だと、2週間に1回とか1ヶ月に1回来てもらって、最初は座るだけとか、歯を磨くだけとか、そうやってちょっとずつ慣れていってもらう感じなんです。

——同じ患者さんが何回も通って来られるんですね。成長を見守ることができると。

I:1年目のときに診ていた患者さんが、3年目になっていろんなことができるようになっていく姿を見るのは本当に楽しいです。それを見守っている親御さんも嬉しそうですし。

「歯科衛生士になることは、中学生くらいからなんとなく決めていました」

——井上さんが歯科衛生士になることを決めたのはいつ頃でしたか?

I:中学生くらいからなんとなく決めていました。理由は特にないんですけどね。

——え、理由はなく?

I:なんか「歯科衛生士になろう」ってずっと思ってました。子どものとき歯医者さんは定期検診で行く程度だったし、何でそう思っていたのかはよくわからないんですよ(笑)

——短大はどうやって選んだんですか?

I:オープンキャンパスに行って、いいなって思って。先生たちが若くて親切だったのと、学生さんもいっぱいいて楽しかったんです。授業も楽しかったですよ。アロマを使ってハンドクリームを作ったり。

——それ、楽しそうですね(笑)。勉強の方は?

I:私はどちらかというと実習の方が座学の勉強よりも好きでした。でも国家試験のときはすごく勉強しました。

——短大時代に一緒だった方たちとは、今も交流が続いていますか?

I:みんな勤め先はばらばらですけど、今もけっこう仲良く会っていますね。

「歯科衛生士は様々な場所で活躍。求人倍率もとても高いですし、ニーズが広がっていると感じますね」

——これから先の目標は何かありますか?

I:臨床を5年すると、障がい者歯科の認定衛生士の資格が取れるようになるので、まずはそこを目標にしています。

——歯科衛生士さんって、歯科医院だけじゃなくて実はいろんな場所でお仕事をされているんですね。

I:特に高齢化が進む中で、歯科衛生士は様々な場所で活躍するようになりました。求人倍率もとても高いですし、ニーズが広がっていると感じますね。

——本日はありがとうございました。

DR+DH+DT WORK STYLE

新潟市口腔保健福祉センター

井上 麗奈(Reina INOUE)

日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科卒業。新卒で新潟市口腔保健福祉センターに就職。一般の歯科医院での診療が難しい障がい者のある方を専門に診療し、月に2回高齢者施設を訪問。摂食嚥下に特化した往診にも同行。

インタビュー収録:2021年1月