歯科衛生士/富岡 野乃花さん
憧れの歯科衛生士さんを目指して、
今日も笑顔で患者さんを出迎える。
歯科医院などで診察や治療を受けるとき、歯医者さんの他にも、診療の補助をしているスタッフがいます。それが「歯科衛生士」です。歯科衛生士の仕事は「歯科診療補助」「歯科予防処置」「歯科保健指導」の大きく3つに分けられています。
「歯科診療補助」というのは、歯科診療の現場でのアシスタント業務全般です。歯科医師へ治療器具の受け渡しをしたり、口の中の水を吸ったり、他にも物品の整理整頓や在庫管理、環境整備など様々な仕事があります。また、歯の型を採ったり、患者さんの口の中に直接触れることもあります。同じようにアシスタント業務をする仕事に「歯科助手」もありますが、歯科衛生士が国家資格で医療行為を行えるのに対して、歯科助手はそうではありません。
「歯科予防処置」というのは、歯や口の病気を予防することです。例えば、むし歯になりにくくするために、歯にフッ素を塗ったり、歯みがきでは取れなくなってしまった歯の汚れ(歯石)を専用の機械や器具で取り除いたり。また、定期検査のときの歯周病検査も歯科衛生士の役割です。病気になってから治すのではなく、病気にならないための処置をする。それが歯科予防処置です。
「歯科保健指導」は、患者さんが自分自身で口の中の健康管理ができるように、知識を教えたり、歯みがきのやり方を指導したりすることです。噛み方や食いしばりなどの癖の改善や、筋力トレーニング、飲み込む能力のトレーニングなども行います。
歯科衛生士といえば、歯科医院で歯医者さんのそばにいる、そんなイメージが強いかもしれませんが、今は活躍のフィールドがどんどん広がっています。例えば、通院できない患者さんの自宅を訪問して歯や口の中のケア(口腔ケア)をする訪問診療など、地域で高齢者を見守る「地域包括ケアシステム」と呼ばれる仕組みの中で、他の業種や地域の人たちと連携をして活躍する機会も増えています。
また、結婚や出産で一度現場を離れた女性が、自分のライフスタイルに合わせて職場復帰できるのも、歯科衛生士の働き方の特徴のひとつです。たとえば「妊娠から出産前までの間は午後の2時間だけ働いている」「子育てが落ち着くまでの間、午前中だけ働いている」そんな柔軟な働き方が可能です。国家資格は一生有効ですから、生涯を通じて歯科衛生士として働くことができるのです。
歯科衛生士は常に患者さんと接するのが仕事です。だから、様々な年代の人と向き合い、丁寧に接することのできるコミュニケーション能力や清潔感のある人材が求められます。また、歯科医師をはじめ仲間たちと協力をして仕事ができる協調性も大切です。
歯科衛生士の国家試験を受験するには、専門の養成学校を卒業し受験資格を得る必要があります。歯科衛生士になるための養成校には、専門学校・短期大学・大学の3種類があります。専門学校・短期大学は3年制、大学は4年制となっています。いずれの養成校でも、学校での座学や実習の他に、実際の医療現場での実習を行います。歯科衛生士は技術も必要ですし、患者さんや他の医療スタッフといった様々な人たちとのコミュニケーションも重要ですから、現場の実習で学ぶことはとても多いです。ちなみに、歯科衛生士の国家試験の合格率はなんと例年約95%(近5年)。きちんと学び、養成校を卒業することができれば、高い確率で国家試験に合格できるといえます。
歯科衛生士の就職率はとても高く、求人倍率は常に10倍を超えて推移し2018年には20倍を超えました。これは単純にいうと、歯科衛生士ひとりに対して20件以上の求人があるということで、就職の選択肢は豊富です。
仕事によっては、結婚によって引越をしたり、妊娠・出産で仕事を辞めたりすると同じ職種で仕事先が見つからないケースもありますが、歯科衛生士は全国に歯科診療所があるため、どこでも仕事を探すことができます。
また、キャリアアップをすることで各種能力手当がつくこともあります。これは、各種学会の「認定歯科衛生士」など、プラスアルファの資格や能力がある場合です。認定歯科衛生士とは、小児歯科や矯正歯科、歯周病やホワイトニングといった様々な学会や団体が認めた、その分野のエキスパートの歯科衛生士の資格です。自分の興味のある分野や、勤務先の医院の特徴にあわせて取得でき、歯科衛生士としてのキャリアアップも望めます。また、介護支援専門員(ケアマネージャー)や、介護福祉士など、他の職種とのダブルライセンスを取得して働くことも可能です。