ARTICLE NUM:020

歯科衛生士/相方 恭子さん

頑張った分だけ得られる達成感、
歯科衛生士はやりがいがある仕事。

DR+DH+DT WORK STYLE|2023.12.21

——まずは相方さんの所属から教えてください。

相方さん(以下S):私は「口腔外科」と「歯科麻酔・全身管理科」の診療室で業務をしています。

——歯科麻酔・全身管理科というのは、どういったところなんですか?

S:麻酔科の先生たちが所属している科になります。「歯科治療が怖くて口が開けられない」とか「口の中に器具が入るとオエっとなっちゃう」といった患者さんにリラックスしてもらうために、鎮静法といってお薬を使用して診療ができるようにする方法があるんです。そのために診療室の予約を取ったり、術中の患者さんのフォローをしたりするのが、歯科麻酔・全身管理科での歯科衛生士の主な業務です。

——それは全身麻酔とはまた違うのでしょうか。

S:完全に意識がなくなる全身麻酔とは違って、意識があるので返事はできるんですよ。酔っ払ったときみたいな、うとうとしたような感覚ですね。緊張が解けて恐怖心がなくなり、治療が受けられるようになります。

——どのように麻酔を投与するのでしょう。

S:点滴でお薬を入れる方法と、マスクで吸入する方法があります。麻酔科の先生がモニターで心電図や血圧を見て全身状態の管理をしながらお薬の調整をしています。

——口腔外科のお仕事というのは、手術のお手伝いですか?

S:大きな手術の場合は全身麻酔になるので、器具の準備やアシストはオペ室の看護師さんがやることになります。私たち歯科衛生士は、外来でやるような局所麻酔でできるレベルでの手術のお手伝いですね。開業医さんでは難しい抜歯や、歯に限らず口腔内の悪いものを切ったりするような手術ですね。

——手術が必要ということは、やはり症状が重い患者さんが多いんでしょうか。

S:そうですね。開業医さんやここ(大学病院)の「総合診療科」で診ている患者さんたちとはちょっと違います。口腔外科なので、例えば、がんの患者さんが開業医さんから紹介されて来られたりします。

——治療も長い期間かかる場合が多いんですか?

S:検査をして病気が確定すると、入院して手術とか、抗がん剤を使った治療や放射線治療を受けることになるので、長い期間かかることもあります。場合によっては移植とか、かなり大がかりな手術になることもあります。

——患者さんの気持ちも、普通の歯医者さんに行くのとはだいぶ違いますよね。

S:やっぱり「口腔外科」なんていうと、緊張されるんじゃないかなと思います。治療も大変だったり辛かったりすると思うので、私たちはできるだけ笑顔で対応するようにしています。

「未知な領域だったからこそ、歯科衛生士を目指した」

——相方さんが歯科衛生士になろうと思ったきっかけって、なんだったんでしょう?

S:歯科衛生士という職業に憧れてこの仕事を目指す人が結構多いと思うんですけど、私はもともと「歯科衛生士になろう」とはまったく考えていなかったんです。高校が進学校だったので周りはみんな大学を目指していて、「私も普通に大学に行くのかな」って何となく思っていたんです。でも明確な目標はなくて……。そんなとき、進路相談か何かのタイミングで、先生が「女性は手に職をつけるのもいいよね」っていう話をしてくださったんです。それで女性の専門職を調べたときに、看護師や保育士の他に、歯科衛生士っていう職業を見つけたんですよ。

——そこで興味を持ったのは?

S:当時は歯科衛生士という仕事の認知度が今よりもずっと低かったんですよ。「え、何をする人?」みたいな。それに比べると「看護師さん」とか「保育士さん」ってみんな仕事のイメージがパッと思い浮かぶし、すでに知っている仕事なので、なりたければすでに「なりたい」って思っているはずじゃないですか。でも歯科衛生士はそのときの私には未知な領域の感覚があったので、逆に「勉強してみようかな」という気持になりました。

——よく分からない職業の方が面白そうだと思ったんですね(笑)

S:そうですね。自分の目標が決まっていない中で、「歯科衛生士ってどんな仕事なんだろう」「そういうのもちょっといいかも」って思ったのがきっかけでした。

——学生時代は楽しかったですか?

S:授業とか実習とか、楽しかったですね。そんなに辛かった記憶はないですけど、忙しかったことだけはおぼえています。2年生になると毎日病院の実習がありましたし。

——当時一緒に勉強したお友達とは、今もつながりがありますか?

S:ありますよ。病院にもまだ同期がいますし、それ以外に一緒だった子たちとも、今でもつながりがあります。

「歯科衛生士は、絶対に達成感を得られる仕事だと思う」

——お仕事をされていて、大学病院ならではの面白さを感じることはありますか?

S:一般の開業医さんだと、だいたい先生はひとりかふたりで、歯科衛生士などのスタッフもほんの数人っていうグループですけど、大学病院だと本当にいろんな先生や歯科衛生士がいて、みなさんそれぞれ分野が違うのでいろんな話が聞けたり、いろんな関係ができたりするところは大学病院でならではだと思います。

——出会いや発見がたくさんあるのは日々楽しいですね。

S:あとは学生教育をしているので、学生さんたちと触れ合えるところも大学ならではですね。学生さんたちがちゃんと育ってくれると、そこでまたやりがいを感じます。

——診療のとき、患者さんから「ありがとう」と声をかけられるとやっぱり嬉しいですか?

S:そういう言葉があると「次も頑張ろう」と思えますね。やっぱり患者さんにしろスタッフ同士にしろ、コミュニケーションを取ることが大事な仕事だなと感じます。患者さんとコミュニケーションが取れるようになってくると、自然と患者さんの方からもいろんな言葉が出てくると思いますし。歯科衛生士はひとりでやる仕事ではないので、スタッフ間もコミュニケーションは大事ですね。

——「人が好きなタイプ」は向いているのかもしれないですね。

S:それはありますね。適性なんか関係なく、歯科衛生士は「やりたい」と思えばどんな子でもなれると思うんですけど、人と接するのが苦手な人だと、現場に出てからが大変かなとは思います。

——歯科衛生士の魅力を高校生に伝えるとしたら?

S:すごくやりがいがあって、絶対に達成感が得られる仕事だよっていうところをアピールしたいですね。というのも、どんなに一生懸命に頑張っても、達成感がないと仕事って長く続けられないと思うんです。患者さんの口の中を磨き終わって「気持ち良かったよ」「すごくすっきりした」とか「つるつるになった」っていう言葉をもらったときは、やっぱり達成感がありますね。長く診ている患者さんだと、最初はお口の中がそんなに綺麗じゃなかったのに、指導を重ねていくにつれて綺麗になっていったり、自分でしっかり磨けるようになったりすると、やっぱりそこでも達成感があります。中にはどうしてもなかなか改善が見られない患者さんもいますけど、それでも歯石を取ったり全体的に磨いたりした後、最後に歯の表面を触って確認するのですが、そのときにツルっとするような感触が得られれば、「よし!」ってなります。そこはもう自己満足なんですけどね(笑)。だからどんなタイミングでも、達成感が得られる仕事だと思うんです。

DR+DH+DT WORK STYLE

日本歯科大学新潟病院

相方 恭子(Kyoko SAGATA)

日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科卒業。同年臨床研修士として1年間病院で研修を行い、日本歯科大学新潟病院に勤務。旧総合診療科、保存科、小児矯正歯科、現在の総合診療科など様々な科を経験し、2012年から口腔外科、歯科麻酔・全身管理科で勤務。2007年、日本歯科審美学会ホワイトニングコーディネーター取得。2023年、日本有病者歯科学会認定歯科衛生士取得。

インタビュー収録:2023年11月