ARTICLE NUM:017
歯科衛生士/金原 里佳さん
子どもたち一人ひとりの成長を
歯科治療を通じて見守っていく。
——まずは今のお仕事について教えてください。
金原さん(以下K):主に歯みがきの指導とクリーニング、歯石取り、食生活指導、フッ化物塗布、あとは治療のアシストや治療に向けたトレーニングです。
——トレーニングというのは、具体的にはどういうことなのでしょうか。
K:例えば、治療が目的で受診した小児患者さんと保護者の方には、何をするか順番に説明して実際に器具を見せたり触ってもらい、繰り返してできることを増やして慣れてもらいます。
——なるほど。ちなみに小児歯科というのは何歳くらいまでが対象になるのでしょう。大人を相手にするのはやっぱり違いますか?
K:おおよそ18歳未満が対象です。ただ、大きくなっても長年通ってくださっている方もいます。高校生でも治療していたりします。子どもが相手といっても、「大人を小さくしたのが子ども」というわけではないですし、まだ成長の途中にある段階なので、患者さんの成長に合わせた接し方を心がけています。
——得意な業務はありますか?
K:得意とか好きとか、そういうことは考えたことがないですね……。でも私は子どもが好きですし、日々子どもの成長を感じられることが幸せで、どんな仕事も楽しいです。
——歯医者さんに行くのが怖い、何をされるかわからなくて身構えちゃう、そういう子もいるのではないですか?
K:すんなり嫌がらずに来てくれる子もいますけど、確かにそういう子もいます。まずは基本の歯みがきから始めます。ひとりひとりに合わせて、お口の中のクリーニングや治療に向けたトレーニングを行っています。予約の時点で保護者の方の不安なことを聞き、子どもを励まして来院してもらうようにしています。
——怖がるお子さんをなだめるテクニックとかあるんですか?
K:まず来院したら「今日は何するか」を、どんな年齢の子でも、本人にわかる言葉で説明します。もちろん保護者の方にもお話します。患者さんとしては何をされるのかわからないのはいちばん心配ですし、それは大人もそうだと思うので、ちゃんと今日何をするか説明して、その中で選べるものに関しては本人に「どっちがいい?」「歯ブラシは何色がいい?」とか選んでもらい、積極的に参加してもらっています。年齢によっては、わかっていても泣いちゃうときもありますけど、全部できたことで自信をつけて帰ってもらえます。
——金原さんが歯科衛生士になりたいと思ったのはいつでしたか?
K:高校二年生くらいでそろそろ進路を決めるってなったときに、「働くなら手に職があった方がいいな」と思っていろいろ調べました。私は小さいときむし歯が多くて歯医者さんにいっぱいお世話になったので、歯科衛生士の仕事のことを詳しく調べて、それで決めました。短大は今は三年制ですけど、私が通っていたときはまだ二年制のときだったので、けっこう毎日が忙しかったです。国家試験を受けるときも一生懸命勉強しました。
——働く場所として小児歯科を選んだのは?
K:学生時代ときは、就職するにあたってまず一般歯科に勤めたんです。それで結婚を機に退職して、出産して、それから二年くらいブランクがあってまた仕事をはじめようと思ったときに、短大で小児歯科学を教えてもらった先生が求人を出していて、「ぜひここで働きたい!」と思って応募しました。
——お子さんがいらっしゃるということは、ご自身のお子さんもこちらで歯のメンテナンスなどを?
K:はい、お世話になっています。
——お休みの日はどうしていますか?
K:ほとんど育児と家事ですね。気分転換みたいなのはあまりないんですけど、ひとりでご飯の支度をしているときが、ひとりの時間になれるので貴重ですね。
「子どもは本当に可愛い。子どもの口の中も可愛い」
——今の職場で大変さを感じたときはありましたか?
K:最初に小児歯科に勤めはじめたときは大変だったなと思います。一般歯科とはまた違うことが求められるんですけど、それに対して自分の知識が学生のままで止まっていたりして。それでもう一回教科書開いてみたりしました。ブランク明けで緊張もしましたし。
——子どもと大人が治療で向き合うのって、それだけでもお互いに緊張するところがありますよね。
K:そうですね、子どもは「何をされるんだろう」って緊張して来ていますし、こちらもはじめてましてのときはやっぱりいい意味で緊張しますね。
——患者さんが子どもだから、特にこういうところを注意して見ています、というところはありますか?
K:うちの医院はガラス張りでおもてが見えるので、まず入ってくるときの様子や表情を見るようにしています。待合室での様子や言動なども、診察室で会う前の段階からちゃんと観察するように心がけています。
——金原さんが思う小児歯科ならではのやり甲斐って何ですか?
K:子どもたちっていろんなことがどんどんできるようになっていくんです。歯磨きを通してその成長をそばで見られるし、健康のお手伝いができることが嬉しいです。子どもは本当に可愛いですし、子どもの口の中も可愛いです。
——確かに子どもの口の中ってすごく可愛いですよね(笑)。ちっちゃい歯も。
K:可愛いですね(笑)
「子どもたちひとりひとりに寄り添って、支援できる歯科衛生士でありたい」
——これから歯科衛生士を目指す若い人たちにアドバイスはありますか?
K:歯科衛生士は国家資格なので、生活環境が変わっても続けられる仕事だと思います。歯科衛生士になった後は、どんな衛生士になりたいか、自分の目標に向かって勉強を続けることが大事です。今はいろんな専門性があって“認定歯科衛生士”の資格もあるので、自分の興味のあるところを目指して勉強していくといいんじゃないかと思います。認定というのは、それを取得したから特別何かができるとか、得になることがあるというわけではないんですけど、自分が今まで頑張ってきたことを学会から認めてもらえる、というのが大きいですね。
——金原さんも取得されているんですよね?
K:私は「小児歯科学会認定歯科衛生士」を目指して、院長、一緒に働くスタッフ、家族の協力があって資格を取得することができました。でも、かといってそれを取得することがゴールではないので、これからも勉強して、子どもの言葉や表情、行動、保護者の方の様子や生活環境などいろいろなことに注意深く目を向けて、子どもたちひとりひとりに寄り添い支援できる歯科衛生士でありたいと思っています。
DR+DH+DT WORK STYLE
ばばこども歯科クリニック
金原 里佳(Rika KINPARA)
日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科卒業。一般歯科診療所で勤務。結婚を機に退職。2012年4月より「ばばこども歯科クリニック」にて勤務。小児歯科学会認定歯科衛生士を目指し、申請中に妊娠、出産、育休を経て、2022年12月に取得。口腔ケアを通して患者と保護者の成長に寄り添い見守り続けている。
インタビュー収録:2023年5月