ARTICLE NUM:021
歯科衛生士/土田 江見子さん
インプラントでキャリアを積んで、
いろんな場面で気配りのできる歯科衛生士に。
——口腔インプラント科にお勤めですが、まずはインプラントについて教えてください。
土田さん(以下T):歯科のインプラントが知れ渡っているので、「インプラント」というとみんな歯の治療のインプラントをイメージすると思うのですが、実は身体の中に埋め込む人工物のことをすべて「インプラント」と呼ぶんです。歯科でいえば、顎の骨に土台を入れて、そこに歯を被せるのがインプラント治療なんですけど、心臓のペースメーカーもインプラントだし、成形のシリコンだったり、あとは骨折したときの骨を固定するボルトだったり、プレートだったりっていうのもすべてインプラントです。
——そうだったんですね。インプラントといえば、今までは歯のイメージしかありませんでした。歯のインプラントを行うということは、やはり高齢の患者さんが多いのでしょうか。やはり患者さんが自分から「インプラントにしたい」と言って来られるわけですよね。
T:そうですね、入れ歯が嫌でインプラントを希望して来られる方が多いです。私たちの方から「あなたはインプラントにしてください」とは言いません。
——何本インプラントにするかは、どのように決めるのですか?
T:歯がないところにインプラントを入れるので、歯が何本ないかによります。あとはお口の中や顎の骨の状態にもよりますし、何本入れられるかは歯科医師の診断と患者さんの希望によって決まってきます。
「インプラントは専門性が高いので、覚えないといけないことも多い」
——普段のお仕事はどんなことをされていますか?
T:基本的な受付業務、機器の洗浄滅菌、診療のアシスタント、インプラント手術の準備と片づけ、あとは実習生の教育とかですね。
——インプラントを扱う歯科衛生士さんは、特に気をつけなきゃいけないところなど、あるのでしょうか。
T:インプラントって種類がたくさんあるんです。この病院では6つのシステムを使っているんですけど、システムごとにドライバーが違ったり使う器具が違ったりするので、そういう細かなところを覚えないといけないですね。専門の機材を使うには、専門の知識がないといけないので。でも、それはインプラント科に配属されてから学ぶことです。
——「日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士」の認定をお持ちですが、これも取得するのは大変なのでしょうか。
T:規定で、まず日本口腔インプラント学会に入会すること、3年以上インプラント治療に携わっていること、学術大会に2回以上参加していることなどがあり、あとは症例としてインプラント手術が終わって歯が入ってから3年経過して安定してる症例を3症例出さなきゃいけない、というのがあります。なので、歯科衛生士として働きはじめてからは3年くらいはしっかり経験を積まないといけませんね。
——土田さんが歯科衛生士を目指したのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
T:父親が歯科医師だったので、小さい頃から「私も歯科の道に進むのかな」とはなんとなく思っていました。
——お父様から、ぜひやってくれ、という言葉は?
T:それはありませんでした。でも私は歯科医師にはなりたいと思わず(笑)、歯科衛生士ならいいかな、と。
——当時と比べて、今の学生さんを見ていて感じることはありますか?
T:私たちが実習生の頃って、歯科衛生士として働いている先輩は立場的にけっこう怖い存在だったんですよ。でも、今の子たちはすごく懐っこく話しかけてきてくれますね。昔は今よりも学生との距離が離れていた感じでしたけど、今はお互い話しやすい環境になっていると思います。
——大学病院ならではの働き方ってありますか?
T:そうですね、歯科の病院ですけど、その中にもいろいろな科があって、たくさんの人が働いています。それだけ関わる人の数が多いのは、大学病院ならではだと思います。
「歯科衛生士は、気が利いてなんぼの仕事だと思います」
——インプラントに携わる歯科衛生士ならではのやりがいってどんなところでしょうか。
T:やっぱりインプラントは扱う材料が多岐に渡りますし、専門性も強いです。それをふまえた上で、歯科医師の先生の診療時間ができるだけ短くなるように心がけることですね。アシストがもたつくと診療時間は長くなるし、それだけ患者さんにも負担がかかるので、できるだけテキパキとアシストをして、先生がスムーズに診療できるようにと思っています。あと、歯を失った患者さんが歯を取り戻すためのお手伝いができることに、やりがいを感じます。
——長く一緒にやっている先生とは、もう阿吽の呼吸みたいなところもあるのでしょうか。
T:それはありますね。「次に欲しいものは何かな」ってわかるようになってきます。
——最後に、歯科衛生士になりたいと思っている高校生へ、アドバイスをお願いします。
T:歯科衛生士って、気が利いてなんぼだと思うんですよ。気配りができる、周囲に配慮ができる、あとは丁寧な行動ができることが大事です。気が利くタイプの子はやっぱり向いていると思いますね。
——しゃべるのが苦手なタイプの子は難しいですか?
T:そんなことはないですよ。しゃべるのが苦手でも、表情が柔らかいとか、話しかけられればちゃんと答えられるとか、意思表示がしっかりできれば。実習生を見ていても、人と話すのが苦手な子も中にはいるんです。でも、だからって話さないんじゃなくて、話しかけてあげるようにはしています。
——患者さんからすると、やっぱり話しかけやすい歯科衛生士さんの方がいいですよね。
T:そうだと思いますよ。口腔インプラント科の場合は治療期間が長いので、患者さんが通う回数も多いですし。診療室のスペースも限られているので、来ていただいている間に親しくお話するようになりますし、たくさんお話することもありますし。私たちも、話しかけてもらえると嬉しいですね。
——なるほど、コミュニケーションはやっぱり大切ですね。今日はお忙し中ありがとうございました!
DR+DH+DT WORK STYLE
日本歯科大学新潟病院
土田 江見子(Emiko TSUCHIDA)
日本歯科大学新潟短期大学卒業。同臨床研修歯科衛生士補綴科コース修了。臨床研修歯科衛生士として補綴科で1年間研修しインプラント治療の診療補助を経験。日本歯科大学新潟病院に勤務。2008年に同病院インプラントセンターに配属され現在に至る。約15年間インプラント治療に携わる。2010年、日本口腔インプラント学会 インプラント専門歯科衛生士取得。
インタビュー収録:2024年3月