歯科の学びを知ろう 2[歯科基礎科目]

はじめて触れる歯科医学。
専門分野の扉を開く「歯科基礎」。

歯科の学び|2021.04.25

歯学部に入学しての6年間で学ぶことは、学校案内やシラバスに書かれていても、実際にどんな授業があって、どのくらい大事なものなのかイメージしづらいですよね。そこで「実際にどんなことを勉強するの?」という率直な疑問を、それぞれの科目を担当している大学の先生に聞いてみました。今回は、主に2年生から本格的に取り組む「歯科基礎科目」篇です!

はじめて医学に触れる科目で、
歯科医学の基礎となる知識を修得していきます。

――歯科基礎科目は何年生からはじまりますか?

辻村先生(以下T):対象は1年生から4年生になります。ただ、多くの歯科基礎系科目は2、3年生にありますね。一般教育科目と臨床科目の橋渡しの役割をしています。

――実際に、歯のことを学びはじめるわけですよね。どんなことを勉強するのでしょうか。

T:歯科基礎科目ははじめて医学に触れる科目で、歯科医学の基礎となる知識を修得するものです。内容は、高校でいう生物に近い“からだのこと” 、化学に近い“材料のこと”などの理系分野から、現代社会に近い“医療のシステム”、日本史・世界史に近い“医学史”などの文系分野まで多岐に渡ります。どれも歯科医療につながっているものです。

――カリキュラムは、自分で受けたい授業を選択するのでしょうか?

T:いえ、一般の大学のように授業を選択することはできません。国家試験合格とその先にある歯科医師というゴールに向けて、学ぶべきことがたくさんあるので、選択の余地がないのです。残念に思うかもしれませんが、カリキュラムはゴールを見すえてしっかりと組まれていますし、一般の大学で授業を選択するときによく起こる、科目の取り間違いもないので、選択がないことは決して悪くないと思いますよ。

――基本的には座学(教室で講義を受けるスタイル)の授業なのでしょうか?

T:教室で行う講義と手を動かす実習があります。講義と実習はセットになっていることが多いです。教室で座って先生の話を聞く形式だけではなく、実習で実際に見て触れたり、手を動かしたりすることで、講義の内容を体得していきます。実習はグループ学習を行うなど様々に工夫されています。

――歯科基礎科目の中で、学生に人気のある授業というとどんなものがありますか?

T:「ファンダメンタルスキル実習Ⅰ」は歯科医師に必要なコミュニケーションスキルを身につけるための実習で人気があると思います。性格診断などをした上で進んでいくので、自分の個性を客観的に捉えて、自分を変えるきっかけになります。私が学生だったら、受けてみたい授業のひとつですね。開業にも役立つ歯科医療の基本情報が得られる「医療情報・医療管理学」に興味を持つ学生も多いです。医療システムや保険を含む経済的知識、危機管理の基本事項を学ぶもので、将来を考えると大きなプラスになると思います。

――辻村先生が担当されている「解剖学」では、具体的にどんなことを学びますか?

T:私が担当しているのは、顕微鏡を使わないとわからないようなからだの細部の特徴を学ぶ授業です。からだを構成しているのは、肉眼的には胃、肺などの目に見える器官ですけど、器官を顕微鏡で見ると、細胞と細胞が作り出すものから成り立っていることがわかります。これらは意味を持った集団を作っていて、その集団を組織といいます。私が扱っているのは組織とそれを構成する細胞で、授業ではこれらの特徴を紐解いていきます。からだは肉眼で見えないレベルで非常に精巧に作られていることが分かって、私たちのからだの神秘を感じることができるはずです。

――授業中の学生さんはどんな反応ですか?

T:学生は特に、歯をはじめとする口の中の構造に興味を持っているように感じます。「口なんて、範囲が狭くて面白くない」と思う人もいるかもしれませんが、授業を受けると、その範囲はけして狭くないと気がつくはずです。口の中はとても特殊な部分でもありますし、まさに「歯科医師は専門職である!」という意識を持ち始めるのかもしれませんね。顕微鏡観察の実習では、教科書には書かれていないような例外的な現象に気がつく学生もいるくらいです。

――専門分野って深くて難しいんじゃないかな、って思っちゃうんですけど、歯科基礎科目の授業が難しくてついていけない学生さんはいますか?

T:授業は丁寧に進めていきますので、難しくてついていけないということはないと思います。高校で勉強していない教科があっても大丈夫です。ただその一方で、歯科基礎科目は覚えなければいけない知識の量が多く、コツコツ勉強する必要があるので、「本当は歯科医師になりたくない、歯学部に入りたくなかった」というような学生がついていくのは難しいかもしれません。

――やっぱり「歯科医師になりたい」「国家試験に合格したい」という強い気持ちがなければいけませんね。本日はありがとうございました。

教えてくれた先生

日本歯科大学新潟生命歯学部

辻村 麻衣子 先生