プロが教える、歯ブラシの話。

歯ブラシの寿命(交換時期)って
どのくらいなの?

歯科の学び|2024.05.30

お口の健康を保つための重要なアイテムである“歯ブラシ”。皆さんはどのタイミングで歯ブラシを交換して、新しい歯ブラシを使っていますか? 「なんとなく気が向いたら」「だいたい2~3か月に1回」などその答えは様々だと思います。せっかく毎日歯磨きを行い虫歯や歯周病予防に励むなら、最適なツールを使って最大限の効果を発揮させたいですよね。歯ブラシは何を目安に交換ししたら良いのか。また、長く使っている歯ブラシはなぜ交換する必要があるのか。今回はそんなお悩みを解決するべく、毎日使っている歯ブラシの交換時期とその刷掃効果について、まとめてみましょう。

 

1. 歯ブラシの使い方

皆さんは1日に何回歯を磨きますか? 朝と寝る前だけの2回磨く人、お昼も入れて3回磨く人、様々だと思います。「歯科の学び」 “プロが教える、歯みがきのコツ!” の巻でもお話したように、歯磨きをする際には、適切な圧(歯磨き時に歯や歯グキに加わる圧:力加減)や正しい磨き方があります。圧は150から200グラム(毛先が開かない程度の圧)で、歯や歯グキへの適切な当て方も含めて、丁寧に磨く必要があります。補助用具の必要性についても「歯科の学び」 “プロが教える、歯間清掃用具・補助用具” の巻で説明しました。これでお口の中は綺麗に保てますが、歯磨きの回数については、平均では「1日3回磨く人」がいちばん多いと言われています。歯ブラシの寿命に影響するのは、「歯磨き回数が極端に多い人」「あるいは圧が極端に強い人」そして「歯ブラシの使い方」や「歯ブラシの毛の硬さ」など様々です。では実際のところ、平均的にはどのくらいの期間で歯ブラシを交換したらいいのでしょうか。

 

2. 歯ブラシの交換時期

歯ブラシの交換目安は、平均的な使用方法であれば1か月と言われています(条件によって、1か月から1か月半くらい)。したがって、「歯ブラシの寿命は約1か月」ということになります。また、歯ブラシを横からや後ろから見たとき毛先が歯ブラシの頭(ヘッド)からはみ出して見える(毛先の開いた歯ブラシ)とき、これは交換するタイミングになります。1か月に1本を目安に交換しましょう。

 

3. 同じ歯ブラシを使い続けた場合

では毛先の開いた歯ブラシを、そのまま使い続けていた場合にはどんなことが起きているのかを探りましょう。

細菌が増殖する……お口の中には常在菌が存在しています。そのため、歯を磨くことによって歯ブラシの毛先には菌がたくさん付着します。古くなった歯ブラシには特に菌が多く、歯ブラシの頭の部分(ヘッド)は傷がつき、汚れてしまいます。

虫歯や歯周病になる……毛先の開いた歯ブラシで磨くことで、歯に付いた汚れが落としきれずに残ったままになります。そのためしっかり磨いたつもりでも、虫歯や歯周病になってしまうことがあります。

歯グキや歯を傷つける……歯ブラシの毛先が開いたり、古くなると汚れが落とせなくなることの他に、歯グキや歯を傷つけてしまうリスクがあります。磨いた後に「虫歯じゃないのに、冷たいものがシミてくる」という人は、毛先が開いた歯ブラシで歯グキや歯を傷つけ、歯グキが退縮して、歯の根が露出しているかもしれません。それがシミる原因の1つにもなります。

相対的な汚れを落とす力が減少する……毛先が開いた歯ブラシでは、どんなに正しくブラッシングしても、磨けていないことが多いです。毛先の開いた歯ブラシと新しい歯ブラシを比べると、毛先の開いた歯ブラシは新しい歯ブラシよりも、汚れを落とす力が「約4割」減少してしまうことが分かっています1)。すなわち、新しい歯ブラシで落ちる歯垢を100%とすると、毛先が少し開いた歯ブラシでは80.8%、毛先の開いた歯ブラシでは62.9%しか歯垢を落とすことができないということになります。同じようにみがいていても歯垢の除去率に差が出てしまうのです。
1):(公財)ライオン歯科衛生研究所、日本小児歯科学会報告会、1985 

 

まとめ

歯ブラシの交換時期の目安が分かりましたか? 毎日お口に入れるものなので、常に清潔な歯ブラシを使用し、虫歯や歯周病を予防しましょう。人より歯ブラシの交換が頻繁な人は、歯の磨き方に問題があるかもしれません。自分にあった歯ブラシ選びと磨き方について、歯医者さんや歯科衛生士さんに聞いてみてください。