歯科の学びを知ろう 3[臨床科目]
本物の道具や機器で歯科医師の
技術を習得する「臨床科目」。
歯学部に入学しての6年間で学ぶことは、学校案内やシラバスに書かれていても、実際にどんな授業があって、どのくらい大事なものなのかイメージしづらいですよね。そこで「実際にどんなことを勉強するの?」という率直な疑問を、それぞれの科目を担当している大学の先生に聞いてみました。今回は、3年生から本格的にはじまる、実際の歯科医師としての手技の学び、「臨床科目」篇です!
モニター、マネキン、削る器械など、
実際の歯科治療で使用する道具で手技を学ぶ。
――いよいよ臨床科目ですが、これはどんな目的で取り組む科目なのでしょうか?
水橋先生(以下M):臨床科目は、患者さんの口の中全体を診て、診断し、治療ができるようになることが目的です。授業では、むし歯や歯周病の原因や治療方法、麻酔や抜歯の方法、被せものや入れ歯を作る方法など、歯科に関するあらゆることを学びます。
――おー、まさに歯医者さんって感じですね。この臨床科目は何年生からはじまりますか?
M:2年生から臨床に関連する基礎科目がはじまり、3年生から本格的に臨床科目がはじまります。
――最初はどんな内容からスタートするのでしょうか?
M:学生がお互いに口の中の診査をしたり、実習室にあるマネキンを使用して、むし歯を除去して詰め物をする、麻酔や抜歯をするといった手技を学んでいきます。矯正装置や被せもの、入れ歯の製作などもひと通り行います。
――実際の医療機器を使うわけですね。
M:本学の実習は「マルチメディア臨床基礎実習室」で行います。ひとりに1台の実習机があって、モニター、マネキン、削る器械など、診療に必要な機器が備わり、実際の歯科治療で使用するものと同じ道具を使って実習を行うんです。
――学生さんは楽しんで取り組んでいますか? それとも大変そうですか?
M:学生は真剣に一生懸命にやっていますよ。変な緊張をしたり、必死についていくという感じではないです。実際の診療と同じ内容なので興味を持ってやっています。「実習が楽しい!」という学生ももちろんいますし、「授業だけではわかりにくかったところが、実習でよく理解することができた」といった声もよく聞きますね。
――水橋先生がご担当の「歯科補綴学」では、具体的にどんなことを?
M:私が担当している歯科補綴学では、歯を失った後の口の中の状態、かみ合わせや顎関節の状態の診査方法、症例ごとの入れ歯の設計を学び、製作の手順を学びます。入れ歯の調子が悪い患者さんに対する診査方法や、入れ歯の調整の仕方も学んでいきます。実習では、実際に授業で学んだかみ合わせや顎関節の状態の診査を学生さん相互で行ったり、模型上で入れ歯の設計をする、総入れ歯の歯を並べて本物の入れ歯を作る、という内容です。
――その中で、学生さんが特に面白がったり、興味を持つのはどんな内容のときでしょうか?
M:学生さんが面白がるのは、顎関節の状態の診査です。そこに症状のある学生さんもいるため、自分の顎関節の状態がわかるようになり、面白いようですね。実習でひとつずつ手順を踏んでピカピカの入れ歯が完成したときには、とても喜んでいます。それと、興味を持つのは、かみ合わせや顎関節の状態についてです。みんな、自分の口の中の状態、顎関節の症状と照らしながら授業を聞き、考えて、学んでいます。
――「臨床科目」を教える立場として、歯科医師の技術や知識を身につけるために学生さんに知っておいて欲しいこと、授業に対する心構え、取り組む姿勢など、伝えたいことはありますか?
M:歯科医師の技術や知識を身につけるためには、まず何より、歯科に興味を持ち、楽しんでもらいたいですね。興味を持てるような授業内容だと思いますので、しっかりと話を聞き、教科書も読み、さらに実習で実際に手を動かしながら学んで、覚えて、身につけて、これをコツコツと積み重ねていくことが大切だと思います。授業は、学生さんが理解しやすいように、わかりやすくスライドにまとめたり、教科書の内容に加えて臨床の画像も取り入れたりしながら準備をしています。授業を聞いて内容がわかるとますます楽しくなると思いますので、とにかく授業を大切にして欲しいと思います。
――興味を持って楽しめると、新しいこともどんどん吸収できますよね。本日はありがとうございました。
教えてくれた先生
日本歯科大学新潟生命歯学部
水橋 史 先生