歯科の学びを知ろう 5 [訪問歯科]

通院できない患者さんの口腔ケア。
訪問歯科診療実習を取材しました!

歯科の学び|2021.12.21

5年生になるとはじまる病院での臨床実習。ローテーション方式で様々な科に配属されて実際に患者さんを診察しますが、院内だけでなく、病院の外での実習も行われます。「訪問歯科口腔ケア科」は、日本歯科大学新潟病院に昭和62年に発足した「在宅歯科往診ケアチーム」をはじまりとして、平成26年に新たに診療体制を整えた診療科です。ここでの実習は、老人施設などに派遣される診療チームの一員としての「訪問歯科実習」。いったいどんな実習なのでしょうか。今回は特別に、日本歯科大学新潟生命歯学部5年生の今井理咲子さんの訪問歯科実習に同行させてもらいました!

■ 訪問歯科診療とは

訪問歯科診療とは、高齢者や病気を持っている人など通院で歯科治療を受けられない人でも、在宅や施設で歯科診療を受けられる歯科往診システムです。むし歯の治療や入れ歯やお口の検診、口腔ケアも行います。超高齢社会を迎えた歯科医療においてその需要は高まる一方です。

 

病院に足を運べない患者さんの口腔ケアをしていくのは、とても大切なこと。

――今井さんは今回、登院生として訪問歯科実習を行いました。まず「登院生」というのはどういう意味か教えてください。

今井さん(以下I):私が所属する新潟生命歯学部の5年生で、病院実習生として実際の歯科医療の現場で勉強している立場のことです。

――病院実習はもう慣れましたか?

I:病院実習は何度もやっていますし、歯科医師の先生の処置を見学したり、患者さんの治療をしたりしていますが、緊張の毎日です。

――訪問歯科診療に行く前に、医局で先生とお話をされていました。どんな内容のお話だったのでしょうか。

I:「今日診療する患者さんはこういう患者さんで、こんな病気を持っている」という情報を事前に共有していました。患者さんのこれまでの口腔内の写真を見せてもらったりして、「こういうことに気をつけた方がいい」ということをしっかり確認しました。

――出発前には事前のミーティングがあるわけですね。さて、今井さんは今日は実習でどんなことをされたのでしょうか。

I:歯科医師の先生と歯科衛生士さんと一緒に介護施設に伺って、診療を行いました。具体的には、今日は抜歯の日だったので、先生のアシスタントとして横について、スポンジブラシなどで患者さんの口腔内を清潔にしたりしました。

――特に気をつけたことはありますか?

I:患者さんが下唇を噛んで傷ができていたので、あまり触らないように気をつけましたね。

――病院実習と訪問診療の実習では、やり方や感覚的な部分で違いを感じることはありますか?

I:病院に自分の足で来てくれる患者さんとは違って、病気をお持ちだったり、歩くことができなかったり、麻痺で手足を動かせないという方も多いので、処置をする内容は一緒でも、やっぱりその部分で違いはあります。例えば、痛みを感じていても、うまく話すことができない方もいらっしゃるんですね。気づきにくいですけど、やっぱり痛みがあると表情に出るので、そういうところにしっかりと気づいて処置をしたいなと思いました。

――これから訪問歯科の需要はより高まると言われています。今井さんも将来は訪問歯科の仕事に携わることがあると思いますか?

I:そうですね、訪問歯科はやってみたいです。病院に足を運べない患者さんの口腔ケアをしてくことは、とても大事なことだと思うんです。病気を持っていても、口の中をきれいにすることで寿命を伸ばしてあげることができると思っています。

――口の中が健康でしっかりとものを食べることができれば、その分、長生きができますよね。ところで、訪問歯科の場合でも、普通に病院で受けるような診療を受けられるのですか?

I:思っていた以上にいろんなことができるんだな、と思いました。例えば歯を削る機械がないと歯を削ることはできないんですけど、その機械も持ち運びができる小さなものがちゃんとあるんです。私も今日初めて見て、すごいなって思いました。

――半日、訪問歯科の現場で実習をしてみての感想を聞かせてください。

I:実は訪問歯科実習は今回が初めてなんです。今まで、訪問歯科と聞いてもあんまり具体的なイメージを持てなかったんですけど、今日、実際に現場に立っていろんな患者さんと接して、その人に合った声かけとか処置のやり方を先生たちがされているのを見て、とても勉強になりました。

――ところで、今井さんが歯科医師を目指すと決めたのは?

I:私は母親が看護士で、もともとなんとなく医療系の方に進みたいと思っていたんです。歯って普段はあまり気にしないというか、興味を持って自分から学ぼうとしないと学べないものだと思うんですね。それで、私は歯の専門的なことをちゃんと勉強したいと思って、歯学部を選びました。

――三重県のご出身ということですが、大学を選ぶときに重視したものは?

I:日本国内の歯学部のある大学の大学案内のパンフレットをいろいろ見たんですけど、歴史と伝統のある歯学部だし、カリキュラム的にもいちばん自分に合っているなと思って、この大学に決めました。

――大学生活はどうですか?

I:そうですね、今、5年生になって実際に病院実習に参加して、歯科医師というのはすごくやり甲斐のある仕事だなと実感しています。実習生ひとりひとりに担当の患者さんがいるんですけど、実際にそうやって臨床で患者さんを診察することがとても楽しくて、日々充実しています。

――来年、6年生になるといよいよ国家試験ですね。頑張ってください!