歯科の学びを知ろう 1[一般教育科目]
歯学部全員、まずはここから!
一般教育科目を最初に学ぶ理由。
歯学部に入学しての6年間で学ぶことは、学校案内やシラバスに書かれていても、実際にどんな授業があって、どのくらい大事なものなのかイメージしづらいですよね。そこで「実際にどんなことを勉強するの?」という率直な疑問を、それぞれの科目を担当している大学の先生に聞いてみました。まずは入学したばかりの1年生ではじまる「一般教育科目」篇です!
基礎知識をしっかり身につけることは、
歯科の専門知識や国家試験の学びの土台になる。
――1年生は一般教養科目が中心になるそうですね。まず一般教養を学ぶことは、どんな目的があるのでしょうか。
岡先生(以下O):目的のひとつは学生のスタートラインを揃えることです。今は高校で理系科目をまったく履修せずに入学した学生もいます。この状態でいきなり専門科目をはじめるのは困難ですから、一般教養科目を先に学んで、正しい生活習慣や勉強方法を整えます。もうひとつの目的は、基礎知識の確認です。「一般教養」とまとめてよぶと、歯科医学と関係ないように聞こえるかもしれませんが、どの科目も専門との関連を考慮して構成されています。よりよいかたちで専門の学びに入るための土台作り、ということですね。
――具体的に、どんなことを勉強するのでしょうか。
O:例えば、国語・語学の場合は「国語表現」「総合英語」「実用医学英語」「基礎独語」「ドイツの生活と情報」など多岐に渡っています。理系科目だったら「細胞の生物学」「熱と物質の物理」「生体物質の化学」「自然現象の数学」、その他の科目は「社会学」に「青年心理学」、あとは紹介しきれませんがオリジナルの科目と実習でしょうか。後期からは専門の基礎科目ともいえる「健康科学」「ヒトの一生」「材料科学」などがあります。
――苦手な教科でついていけないことはないですか?
O:どんな科目も苦手な学生がいることは担当の先生もカリキュラムも織り込み済みです。最初からついていけない難易度ということはありません。この部分のケアについては本学の強みだとも考えていますから、心配はいらないですよ。
――ちなみに、今後の歯科の専門の勉強のために、特にしっかりやっておかなきゃいけない授業とかありますか?
O:学生からも非常に多い質問で、多くのご父兄方も気になる部分だと思います。モデルコアカリキュラムがどのようなものか目を通し、シラバスを熟読してから聞いていただきたいという前提条件はありますが、まずは「どの科目も全力で頑張ってください」と伝えたいです。そもそも教科、科目にこだわるということは、大事な部分だけ力を入れて緩急をつけたいという心理ですよね。効率を良くしたいという考えはもっともではありますが、えてして「できれば楽をしたい」という怠け心につながり、講義をないがしろにして「最低限のことを覚えることで乗り切ろう」という行動につながります。考え方はむしろ逆で、あまり時間をかけたくない、自分の中では優先度が低いという科目があるならば、そんな科目こそ講義を集中して聞くべきなのです。
――ドキッ……。なるほど、確かにこの質問は怠け心につながる質問でした……。
O:私の担当科目でも、始まったばかりの春頃は「ここからここまで覚えたらよいですか?」というように、九九の表を覚えて終わりのような勉強法を目指す人がいて注意されています。断片化した知識だけを詰め込んで試験をしのぐというやり方にはまってしまうと、1年生のうちは高校時代の学力貯金があってそこそこ対応できたとしても、2年生以降は論理的な思考が展開できず進歩が止まってしまいます。これは非常に大きなマイナスなのです。
――歯の専門の科目じゃないからといって甘くみてはいけないと。1年生は自分の学びの基礎を作る、大切な時期ということですね。
O:1年生で大事なことは、学校中心の生活リズムを整えること。なによりも毎回の講義を大切にして、講義時間内で内容をより深く理解し、より多くのことを自分に定着させるための基礎を築くことなんです。間違った学習方法、学習習慣はここで修正して、苦手な科目、未履修科目も克服し、得意だったり好きな科目、さらには自分があまり時間をかけたくない科目は講義内でほぼ勉強が完了する、こんなかたちが理想です。
――先生が個人的に、自分も受けてみたいと思う授業ってありますか?
O:よい講義はたくさんありますよ。例えば碓井先生の「青年心理学」は毎回とても盛り上がっていて、教室の脇を通るときに学生の皆さんが湧く声が聞こえてきます。面白そうだなといつも興味を持っています。小野先生の「熱と物質の物理」も相互授業参観で受講したことがありますが、とてもよい講義でした。小野先生は本学のネットワーク管理者で情報科学の実習を担当されているというITの最前線の先生なのに、プレゼンソフトはほとんど使用せずに、黒板に丁寧に板書されながらひとつひとつ丁寧に分かりやすい講義をされるのです。
――歯科医師を目指すモチベーションが上がる授業とかもありますか?
O:「プロフェッション」は、本学出身で開業をされている歯科医師の先生や大学で教員をされている先生による、「将来どのような歯科医師を目指すのか」を考えながらモチベーションを維持する講義です。開業医の先生のおひとりは本学臨床教授の方ですが、講義があまりにも面白いので何度も聞かせていただきました。名講義といえると思います。
――面白そうですね。ところで、やっぱり一般教育の勉強がおろそかになると後々困るのでしょうか。
O:基礎というものは境界線があいまいで、「ここまで勉強したから完了」というような範囲が非常にわかりにくいものです。習っている間はその重要性や、自分にとってどれだけ役に立つものなのかを自覚するのは難しく、学年が進んでから振り返ったときにようやくわかることもたくさんあります。例えば、「物理学」の講義では学生が苦労している様子を毎年目にしますが、学年が進んで歯科放射線学関連の講義が始まると「物理の講義が役に立った!」という声が担当の先生に届くそうです。
――歯科の知識をきちんと理解するために、この一般教育科目は必要なものなのですね。
O:専門知識というのは裾野がものすごく広いので、幅広い基礎知識を修得済みの方がより深く、論理的に理解できます。一般教養というのは、すぐには目に見えない部分で、6年間かけて目指す歯科医師国家試験合格のための「土台」になる部分ですから、おろそかにしてはならないと考えています。
――本日はありがとうございました。
教えてくれた先生
日本歯科大学新潟生命歯学部
岡 俊哉 先生