ARTICLE NUM:016

歯科技工士/片山 貴博さん

どんなにキャリアを重ねても、
技術を学び腕を磨き続ける。

DR+DH+DT WORK STYLE|2022.11.14

――歯科技工士としてどんなお仕事をされているか教えてください。

片山さん(以下K):まず歯科医院から依頼を受けて、患者さんの歯型を受け取ります。そこに石膏を注いで模型を作り、その上で失った部分に歯を作っていくという仕事です。

――患者さんと直接やりとりをするわけではないんですね。

K:そうですね。歯科医院などで仕事をしている院内技工士さんは、患者さんと接することも多いと思いますけど、私たちのように歯科技工所に勤める技工士は患者さんと直接やりとりをすることはあまりないですね。でも、患者さんの歯の色の写真を撮影しに行ったり、患者さんの要望を直接聞きに行くこともあります。また歯科医院の先生と電話だったりSNSを使い常にしっかりコミュニケーションを取りながら製作をしています。

――ひとつの完成品を仕上げるのに、どのくらいの時間がかかるんですか?

K:作るものによって違うので、一概にひとつ何時間とは言えないですね。5個や10個を1日でまとめて作るときがあれば、1週間かけてひとりの患者さんの分を作ることもありますし。でもだいたい納期は2週間くらいみてもらうことが多いです。

――いろんな歯科医院とお付き合いをされているわけですよね。

K:そうですね。うちの場合は、代表が各地で講師をやったりしているので、新潟だけでなく、全国からの依頼が宅急便で来たりもしてます。

「国家資格を取得してからがスタートライン。12年目の今もまだ勉強中」

――片山さんは昔から手を動かしてものを作ることがお好きだったんですか?

K:嫌いではなかったですが、ずっと野球をやっていたので、子どものときは外で遊ぶことの方が多かったです。

――歯科技工士になろうと決めたのは?

K:高校3年生で野球が終わったときはまだ何の目標もなかったんです。そんな時たまたま身近に歯科技工士の方が居たので「ちょっと見せてもらおう」と思って、実際に見学させてもらって「これならなんとかやっていけるかな」っていう単純な理由でした(笑)

――それでも国家試験はきちんと合格されたわけですよね。

K:学校で勉強するときに、実習も座学もしっかりとやっていれば、国家試験に合格することは難しいことではないです。ただ、卒業して資格を取ってからが本当のスタートラインなので、そこからは一生懸命頑張らないとです。

――資格を取っただけでは現場で即通用するというわけではないんですね。

K:学校の実習で使う模型と、実際の患者さんの歯の模型は違うわけです。実習模型は綺麗なかたちのものですけど、臨床にはそんなに綺麗なものはないですよね。患者さんひとりひとりで歯の形も色も噛み合わせも違うわけですし、作りづらいものもあるわけです。

――それは先輩などに教えてもらって技術を磨いていく感じですか?

K:そうですね、教えていただきながら少しずつ経験を重ねていくっていう感じです。私の場合は、横浜で6年、新潟で6年、今年で12年目ですけど、今もまだまだ勉強中です。

「1本の歯が全身に影響を及ぼすこともあるから、気を抜くことはできない」

――キャリアを積むと、技術の向上を実感できるものですか?

K:もちろんそうだと思います。ただ、歯科技工士が作るものはいろんな種類があるんです。差し歯だったり詰めものだったり、インプラント、矯正、総入れ歯、部分入れ歯というふうに本当に豊富なので、ひとつのことに満足はしていられないですね。私は様々な患者さんのニーズ応えたいので色々なことに挑戦し、キャリアを積んで更なる技術の向上をいかないといけないと思います。

――患者さんによって、完成するもの、目指すものも変わってきますし。

K:そうですね。だから作るときは、患者さんの顔の写真や性別、今までの病歴とか、そういうのをできるだけもらうようにしてます。例えば「右側のあごの調子が悪いです」とか、そういうのもしっかり考慮しながら作っています。私たちが作った1本の歯が体調を悪化させてしまう、ということもありますから。でも一生懸命作った歯で患者さんにも歯科医師の先生にも喜んでもらえると頑張って良かったなぁと思います。それにはコミュニケーションも技術も知識も欠かせません。

――ちなみに片山さんの得意なジャンルは?

K:うちの場合は何でも屋さんというか、歯1本から上下28本までひとつのジャンルに特化せずに何でもやっていますので得意不得意とか好き嫌いはあまりないかもしれないですね。すべての仕事に対してしっかりと向き合い100点に近づけるよう日々努力しています。

「デジタルの時代の流れにも合わせながら、技術を継承していきたい」

――歯科技工士さんの世界は、センスのようなものが必要ではないかと思うこともありますが。

K:センスも大事だと思います。ただ、医療の世界なのでセンスで片付けられるものではないと思います。私自身もそんなにセンスがある方だとは思ってませんし、この業界はどちらかというと努力をして技術を武器にするという感覚の方が強いかもしれません。

――技術を身につけるのは、何か新しい学びの場などもあるんですか? デジタル技術も今はだいぶ進んでいるようですが。

K:いろいろな学会やセミナーが開催されているので、東京や大阪に受講しに行ったり、自分の挑戦したい内容のセミナーを受けたりしていますね。デジタルは確かに歯科の世界にもだいぶ入ってきたと思います。型取りがペンタイプのカメラになったり石膏模型が3Dプリンターで作れたりパソコン上で歯を設計したりできます。それでも医療の大事なところは失わないように、そのバランスは常に意識しています。最終的には微調整などの手作業は必要ですし。

――次代を担う、ということもそろそろ意識される年齢ではないでしょうか。

K:うちの代表や諸先輩方が長年培ってきた知識や経験してきたことは簡単に継承できるものではないですが、できるだけ吸収して、デジタルの流れにも合わせながら自分なりに対応していけたらいいなと、漠然とですけど思っていますね。

――最後に、歯科技工士という職業が気になっている高校生にメッセージをお願いします。

K:ものづくりが好きとか、手先が器用だとか、そういう人は、ちょっと学校見学に行ってみたり自分で調べたりしてみてほしいですね。歯科医療の専門的な話は難しいですけど、矯正とかホワイトニングとかなら興味がある人も多いと思います。また子供の頃の歯医者さんのいい思い出があるとか、部活で怪我をして差し歯にした経験とか、最初はそういう分かりやすいところからでいいと思うんです。そんなきっかけから最終的に歯科技工の分野を専攻して、同じ仲間になってくれたらいいなと思っています。

――技術がまた次の世代へと継承されていくといいですね。本日はありがとうございました。

DR+DH+DT WORK STYLE

星デンタルラボラトリー

片山 貴博(Takahiro KATAYAMA)

2010年、明倫短期大学歯科技工士学科卒業。同年、有限会社ケイワークス入社。2016年より星デンタルラボラトリーに勤務。2018年、日本臨床歯科補綴学会専門歯科技工士取得。日本臨床歯科補綴学会所属。スタディーグループ『Wクリック(東京)』『NAAD(北海道)』所属。

インタビュー収録:2022年7月