プロが教える、洗口液と液体ハミガキ

違いは何!? 口腔ケアで使用する
洗口液と液体ハミガキの話。

歯科の学び|2024.02.09

お口をケアするには、ハブラシや歯みがき粉以外にも、フロス、歯間ブラシなど様々なアイテムがあることは以前お話しました(“歯磨きの強い味方!フロスや歯間ブラシを知ろう”の巻)。また、昔は歯みがき剤といえば、「歯みがき粉」というのが一般的でしたが、現在では粉や液状、固形などさまざまな形状のものが市販されています。

液体タイプの「洗口液」と「液体ハミガキ」、これらは「マウスウォッシュ」や「デンタルリンス」と呼ばれることもあり、広く知られていますが、皆さんはきちんと区別をして使っていますか? 「洗口液」と「液体ハミガキ」は決して同じものではなく、使用目的や使用するタイミングが異なります。今回はこの液体タイプの口腔ケア用品について、その違いをご説明しましょう。

 

「洗口液(マウスウォッシュ)」

洗口液の歴史

あるアンケート調査では、口腔ケア用品の中で「洗口液」を使用していると回答した人は全体のおよそ30%。使用目的で最も多いのは「口臭予防」で、次に「虫歯・歯周病予防」と続きます。他に、「リフレッシュ」「気分転換」と回答した人もいます。現在、洗口液はTVコマーシャルやドラッグストア、コンビニでもよく見かけることがあり、その存在を多くの人が認知しています。

そもそも洗口液は、よく知られている「リステリン®」が1895年に世界発の口腔内洗浄液として歯科医向けに販売されたのがはじまりです(その後1914年に一般向けに販売されました)。もともとリステリンは消毒法を開発したイギリスの外科医 J.Lister(ジョセフ・リスター)の名前を冠して作られた消毒液でした。それが口腔内を消毒する効果も認められたため、洗口液の開発につながったようです。その後、世界中で研究され、アメリカなどでは日常生活の習慣にすぐに取り入れられました。日本では、1990年代前後にようやく開発が進み、「♪お口クチュクチュ~」で有名な商品が発売され、習慣が定着していきました。

 

洗口液の使用方法

洗口液は、適量を口に含んで20~30秒ほどゆすぐだけで、お口の中のトラブルの原因となる食べカスや汚れなどを洗い流してくれます。歯みがき粉を用いた歯磨きだけでは、歯のすきまに入り込んだ歯周病菌が除去しにくいので、歯の隙間などにも浸透する洗口液が用いられるのです。水で洗い流すと効果が薄れるので、水ですすぐ必要はありません。歯みがきのあとの仕上げにも有効です。

忙しい人は、歯みがきの時間短縮のために洗口液で口腔ケアを済ませてしまう人もいますが、洗口液を用いていても、ブラシを用いた歯みがきが不要になるわけではありません。あくまでも、ブラシを用いた歯みがきも行わないと沈着した歯垢は除去することができませんので、歯ブラシを用いたブラッシングもしっかり行いましょう。

 

洗口液の使用効果

洗口液は、主に口腔内を殺菌するため、口臭を抑えるために用いられます。

※注意:洗口液でうがいした後、すぐに自動車を運転すると飲酒検問で基準以上のアルコール濃度が検出されることがありました。これは液に含まれるエタノールが原因です。このために近年では溶剤にアルコールを用いない「ノンアルコールタイプ」も発売されています。用途など十分に注意して使いましょう。

「液体ハミガキ(デンタルリンス)」

液体ハミガキの歴史

「液体ハミガキ」は液体状の歯みがき剤(歯みがき粉が液状になったもの)のことで、これを用いて歯みがきを行います。歯みがき剤ではありますが、清掃剤(研磨剤)が入っていないので、茶シブやタバコのヤニ等の着色がある場合やその恐れがある場合には普通の歯みがき剤を用いる方がよいです。ブラッシングが必要であるという点では「洗口液」とは異なります。やはりこの液体ハミガキも1990年代に定着したといわれています。

 

液体ハミガキの使用方法

歯みがき剤ですから、基本的には歯ブラシを使ったブラッシングと一緒に使用します。使い方は、液体を適量お口に含んで、ぶくぶくうがいの要領で口の中全体に行き渡らせた後に吐き出し、その後で歯ブラシでブラッシングを行います。補助用具である歯間ブラシを使用する場合は、ブラッシングの前後どちらかで使います。歯みがき粉と違って泡が発生しないため、液体ハミガキを使うと時間をかけて丁寧に磨くことができます。

注意しなければいけないのは「液体ハミガキは歯みがきの代わりにはならない」ということです。歯の汚れを除去したり、歯と歯ぐきの隙間の汚れを除去するのは、ブラシを使った歯みがきにしかできません。

 

液体ハミガキの使用効果

液体ハミガキは「液体」のため、お口の中でブクブクすることで、薬効成分が隅々まで行き渡ります。 さらに、歯みがき後のうがいの必要性がないため、成分を口の中に残しやすくなります。 また、練り歯みがき粉のように「研磨剤」を含んでいないので、歯ぐきや歯にも優しいです。歯ぐきの腫れや歯周病菌の殺菌、歯周病予防などをしっかり行いたい人は、液体ハミガキがおすすめです。また、歯を磨いた後に水で口をすすぐ必要がないので、災害時などにも役立つのが特徴です。

 

今回紹介した「洗口液」と「液体ハミガキ」の2種類。「洗口液」か「液体ハミガキ」かの違いは商品に明記されているので、目的用途に合わせて選択しましょう。

洗口液は口臭防止やお口の中の浄化などを目的に用いられ、ブラッシングの併用を目的としていませんので、油っぽい食事の後や歯みがき後の仕上げ、就寝前など、目的に合わせた商品表示がしてある場合が多いようです。歯みがきの有無にかかわらず日常的に使用するものです。多くの場合、ボトルの使用法欄において「日常のハミガキに加えて」や「ハミガキの後に」といった表示がされていることが多いようです。

一方、液体ハミガキは通常の練り歯みがき粉が液体化されたもので、練り歯みがき粉との大きな違いは研磨剤が含まれていない点です。そのため、一般的に使われている練り歯みがき粉のように歯面を傷つける心配がありません。洗口液と同様の使い方をしますが、歯みがき剤であるため使用後にはブラッシングが必要で、使用法欄において「ハミガキの前に」といった表示がされています。

洗口液と液体ハミガキのどちらを選んだらよいか悩む人もいますが、両者は併用の必要がありません。歯やお口の状態に合わせてどちらか一方を使いましょう。そして「洗口液を使えば歯みがきをしなくてもいい」というわけではなく、また歯みがきの代わりになるものでもありません。正しく理解し、正しく使用しましょう!

商品については歯科医院や薬局、コンビニ等で購入することができます。薬効が異なるものもあるため、歯医者さんや歯科衛生士さんに相談して購入するのがお勧めです。